日本を産油国にする「藻」 生産効率10倍の品種を発見、商業化へまた1歩

原油価格のさらなる高騰が懸念されている。世界各国にとって、エネルギー安全保障の強化はもはや待ったなしの段階だ。そんな中、石油の代替燃料となる油を生成する微細な藻類が脚光を浴びている。

 ただし、現時点では生産コストが高いため、藻類系バイオ燃料が商業ベースに乗るメドは立っていない。この課題を解決するには生産効率を今の10倍以上に 引き上げる必要がある。そして2010年12月、これまで最も有望視されてきた藻類の10倍以上の生産効率を示す新たな藻類を、筑波大学大学院生命環境科 学研究科の渡邉信教授が発見した。

筑波大学大学院生命環境科学研究科の渡邉信教授

 「日本が産油国になるのも夢ではない」。筑波大学大学院生命環境科学研究科の渡邉信教授はこう話す。渡邉教授は2010年12月、従来の10倍以上の生産効率で、重油と同質の油を作り出す「藻類」を沖縄県の海で発見したのだ。

 「オーランチオキトリウム」という名前で、直径5~15マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の球形をしている。これまで発見された中で最も油 の生産効率が高いとされてきた「ボトリオコッカス・ブラウニー」の約12倍の生産効率を示すことを渡邉教授は明らかにした。

 「工業利用ができると考え、すぐに特許を申請した。エネルギー政策を考えるに当たっても、日本にとって大きな武器になる」と渡邉教授は話す。

渡邉教授が発見した「オーランチオキトリウム」という藻類(写真提供:筑波大学 渡邉信教授)
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オーランチオキトリウムから取れた油。重油と同質の炭化水素で、軽油やガソリン、ナフサの原料にできる可能性がある(提供:筑波大学 渡邉信教授)
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食糧価格高騰を招いたバイオ燃料

 

 中東や北アフリカ諸国の情勢不安、そして、エネルギー資源の枯渇に伴い、原油価格のさらなる高騰が懸念されている。世界各国にとって、エネルギー安全保障の強化はもはや待ったなしの段階だ。特に石油と石炭をほぼ全量、輸入に頼っている日本においてはなおさらだ。

 そんな中、石油に替わるカーボンニュートラルな(二酸化炭素を吸収して作る)燃料として、米国を中心に、数年前から注目を集めているのが、トウモロコシや大豆など陸上植物を原料とするバイオ燃料だ。

 ところが、食糧を燃料にするため、その需給関係に影響を与えて食糧価格が高騰。加えて、東南アジアでは、油やしを栽培するため、広大な面積の森や湿原を 開墾するという、本末転倒のような事態が発生した。CO2排出量を低減するどころか、環境破壊が進行してしまったのである。そのため、現在は、欧州を中心 に、サトウキビやトウモロコシを原料とするバイオ燃料に関しては、開墾から栽培、生産、輸送までを評価対象にするライフサイクルアセスメント(LCA)で のCO2削減効果の検証が進められている。

 このような社会的背景を受け、新たなバイオ燃料の原料として、にわかに脚光を浴びているのが、油を生成する微細な藻類である。 

 

 

 

 

自然エネルギーで大注目〜岩手県葛巻町!

2011年04月21日 この記事を転記した翌5/5に、元記事が削除されました。なぜ?

 

 

葛巻町のクリーンエネルギーへの取り組み(本サイト)

 

葛巻町の風車

 


 東日本大震災で福島第一原発事故の危機的な状況が長引くなか、風力発電など自然エネルギーへの期待が高まっている。10年余り前から風力や太陽光発電に力を入れ、町の消費電力の2倍近くの電力を生産するようになった小さな町に注目が集まりつつある。

 岩手県葛巻(くずまき)町は、津波の被害を受けた久慈市から約40キロ内陸の北上山地にある、人口約7700人の酪農の町だ。地震の被害は大きくなかったため、町内の施設に被災者を受け入れたり、職員4~5人を近隣市町に派遣している。

 まだ雪で覆われた町はずれの東側の山に、合わせて15基の風車が回っている。その発電量は年間5600万キロワットで約3千の全世帯が使う電力の1・8倍を作り出している。3月11日は震度5弱の揺れだったが、風車に損害はなかった。

 町立葛巻中学校では、校庭わきに420枚のパネルが3列に並ぶ太陽光発電システムが校舎の照明や暖房などの一部をまかなっている。このほか、木質バイオマスや牛糞(ふん)を活用した発電施設もある。

 


校庭脇の太陽光パネルで校舎の暖房をまかなっている葛巻中学校。

 

 2007年まで2期8年町長を務め、「自然エネルギーの町」の基盤を作った中村哲雄さん(62)は「今度の原発事故で地域分散型の自然エ ネルギーが改めて注目されるのではないか」と話す。震災後に県内や北海道で講演したが、「自然エネルギーは原発に代われるのか」などの質問が相次いだ。あ と80基の風車を町内に建設できる、というのが中村さんの持論だ。しかし、現状ではわずかな量の買い取りしか電力会社に義務付けられていないため、思うよ うに風力発電を拡大できなかった。

 これまで、霞が関の省庁に要望すると「風力や太陽光だけで日本全体の電力需要をまかなえるわけではない」と反論された。中村さんは風向き が大きく変わる予感がしている。後継者の鈴木重男町長は、山村と都市の関係を転換する必要を感じている。「エネルギーの次は食糧が不足する。山村と地方が 互いの機能を理解しながら対等に取り組む時代がやってくると思う」

 

葛巻小学校の廊下には、節約目標と実際の電力消費量が時間別、日別、月累計を表示する「省エネナビ」がある

 

 葛巻町のもうひとつの特色が「省エネ教育」だ。葛巻小学校では、「手洗いは、えんぴつの太さの水で」など、子どもたちが自ら考えた「省エ ネプラン」を実践している。3年生の大久保柚希さんは、自宅でお父さんにつけっぱなしの部屋の電気を注意する。親子の会話を通じて省エネ意識が大人に広が り、町全体の省エネに結び付く。

 前岩手県知事の増田寛也元総務相は「これからエネルギーの需給が窮迫するなか、再生可能な自然エネルギーの開発は時間がかかる作業になる。町民に理解が根付いた葛巻町がひとつのモデルになるだろう」と話している。

 菅直人首相は参院予算委員会で「今回のことを教訓に、太陽、バイオマスなどクリーンエネルギーを世界の先頭を切って開発し、新たな日本の大きな柱にしていく」と答弁した。政府も政策転換を模索している。

 

原発より強かった 東北の地熱発電所

 

東日本大震災では、大きな地震と津波に襲われた福島第1原発が重大な事故を起こした。一方で、同じ揺れに見舞われた東北電力の地熱発電所3カ所(岩 手県、福島県、秋田県)は無事だった。地熱発電のCO2排出量は原子力発電の1KWh当たり20gに比べて、同13g(電力中央研究所調べ)と少なく、温 暖化対策にも有効なことが分かっている。地熱発電は、ポスト原発の有力候補になる可能性を秘めている。

東北電力の地熱発電所は、秋田県の「澄川」(出力5万KW)、岩手県の「葛根田」(1,2号合計出力8万KW)、福島県の「柳津西山」(出力6万5 千KW)、秋田県の「上の岱」(出力2万8800KW)の4カ所。3月11日は、点検中の「上の岱」を除く3カ所が稼働中だった。いずれも大震災発生で自 動停止したが異常はなく、2日以内に運転を再開した。

 

秋田県にある東北電力の澄川地熱発電所(三菱マテリアル「澄川パンフレット」より)

 

■ 原油の高騰にも耐えられる
日本地熱学会は4月6日、内閣府の日本学術会議に「今こそクリーンな安定電源である地熱発電の促進を」という意見書を提出した。地熱発電は、原子力発電よ りもライフサイクル二酸化炭素排出量が少ないほか、化石燃料も使わないので原油の高騰にも耐えることができる。長期間の運転が可能で、事故の危険性も少な いとされている。

天候や昼夜を問わず安定的に発電できるのも強みだ。太平洋に浮かぶ八丈島(東京都)には、東京電力が運営する八丈島地熱発電所があり、全発電量の約 3割を地熱で賄っている。ベース電源として地熱が2千KWを安定供給し、残りの約7割を、需要の増減に応じて内燃力(火力の一種)とわずかな風力で調整し ている。震災の影響はなく、現在も稼動中だという。

日本はインドネシア、米国に次ぐ世界3位の地熱大国で、地熱発電の歴史は約50年ある。しかし、地熱発電所が作られたのは1966年から1999年 までで、全国18カ所のみ。設備容量の合計は約53万5千KWにとどまる(火力原子力発電技術協会「地熱発電の現状と動向 2009年」)。その要因として意見書は、 (1)他のベース電源とのコスト競争、(2)国立公園の開発規制、(3)温泉事業者からの反発――を挙げてい る。

資源の8割以上が眠る国立公園での開発を制限され、国の補助を受けられる「新エネルギー」指定から外されて、地熱開発は停滞した。2008年にバイ ナリー方式の地熱発電だけ新エネルギー指定を受けたが、大規模開発は対象外だ。地熱発電の基礎調査から稼働までは約10年かかり、政府の後押しがないと進 まない。意見書では、開発を促進する「地熱法」制定を提案している。

■ 世界最大出力の地熱発電所は日本製
環境省は2010年に、36年ぶりに国立公園での地熱開発に譲歩した。日本地熱開発企業協議会によると、2011年3月には、規制区域外から公園敷地の地下に向かって斜めに地熱井を掘り進める開発2件が許可され、2011年夏に着工予定だという。

資源エネルギー庁が2008年に設置した「地熱発電に関する研究会」によると、国内の地熱発電所が温泉に悪影響を及ぼした例はない。しかし、温泉の枯渇を懸念する事業者らの反発を受けて頓挫した開発事業もあったため、温泉業界との協調も普及のカギだ。

「3.11」の午前中に閣議決定され、4月5日に通常国会に提出された「再生可能エネルギーの全量買い取り制度」は、地熱発電も対象となる。今はま だ、地熱エネルギーは国内の発電の0.2%に過ぎない(火力原子力発電技術協会「地熱発電の現状と動向 2009年」)。しかし、世界最大出力を誇る「ナ・アワ・プルア地熱発電所」(14万KW)は、実は日本製である。富士電機が2010年にニュージーラン ドの国有電力会社に納めた。既に技術はある。日本国内の地熱の飛躍に期待したい。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年4月18日