東電1号機「メルトダウン」認める

東京電力は12日、福島第1原発1号機で、燃料棒(長さ約4メートル)が冷却水から完全に露出して溶け落ち、圧力容器下部に生じた複数の小さな穴か ら水とともに格納容器に漏れた可能性があると発表した。東電は、この状態を「メルトダウン(炉心溶融)」と認め、格納容器ごと水を満たして冷やす「冠水 (水棺)」作業の見直しに着手した。冷却作業に遅れが出るのは確実で、事故収束に向けた工程表は大幅な見直しを迫られることになった。

 こ れまで圧力容器内の水位は通常時の燃料上端から約1・5~1・7メートル下とみられていたが、水位計を調整して測った結果、5メートル以下と判明。1号機 原子炉の燃料がすべて露出していた時期があった可能性が高く、配管の溶接部に複数の小さな穴が開き、溶融燃料が格納容器に流出したとみられるという。

 ただ、圧力容器下部の表面温度は100~120度と比較的低く、東電は「燃料は(水に浸かって)冷却できている」としている。

格納容器内にも水はあるため、漏出した可能性のある溶融燃料は冷やされて発熱しておらず、水素爆発の危険性は低いとみている。

 経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は圧力容器内の水位について、「(燃料の)一定部分は溶けて下にあり、(水で)うまく冷やされている」との見解を示した。

 東電はこれまで、炉心の損傷割合は55%と推定していたが、今回は「溶けて(本来の)燃料棒としての形状を維持できていない」として燃料が完全溶融した可能性を否定していない。

  東電は、燃料を冷やすために12日までに1号機圧力容器内に計1万トン余りを注水。現在も毎時8トンを注入し、冠水作業に取り組んでいるが、「3千トン以 上の水がどこかにいっている」(東電)状況といい、圧力容器下部の溶接部から漏れ、さらに格納容器から漏水しているとみている。

 今回の事態を受け、冠水作業について東電は「見直す必要がある」とし、保安院も「(燃料の)頂部まで水で満たすのは考えにくい」との見方を示した。