沖合の「波パワー」で発電…海洋国ニッポンにぴったり!

 

スペイン沖に設置されたOPT社の波力発電装置(パワーブイ)のイメージ図。形状が浮き漁礁と酷似しているため、漁業との共存が模索されている

「日本は世界第6位の領海・排他的経済水域(EEZ)を持っています。この膨大な海洋エネルギー資源を利用しない手はありません」と語るのは、東京都の波力発電検討会の委員長を務めている東京大学の荒川忠一教授だ。

  「日本の沖合の波パワーの賦存量(理論上潜在的に存在している量)は、3億キロワット(300ギガワット)以上とみられています。最近の先進的な波力発電 装置のエネルギー変換効率は30%程度なので、3%を利用すれば3000万キロワット以上の波力発電設備を設置することができます」

 問題は、実用化して軌道に乗るまでは、設備の設置コストが非常に高いことだ。しかし、普及していけばどんどん安くなるという。

  検討会の報告書によると、米国のオーシャン・パワー・テクノロジー(OPT)社の2年前の分析では、普及時(年間400基量産ペース)の設備コストは、1 メガワットあたり約3.9億円、発電単価は15円。風力は1.5億~3.1億円のコストで発電単価8~16円。太陽光は7.2億~10.4億円のコスト で、発電単価は50~134円(現在はさらにコストが下がっている)。波力はほかの再生可能エネルギーと比べても遜色ない。米国をはじめ、英国、ポルトガ ル、オーストラリアなど、海洋エネルギーの利用に積極的な国は、さまざまな助成・優遇措置を設けて産業を育成しようとしている。

 例え ば、OPT社と大手建設企業によるオーストラリアの波力発電プロジェクト(投資総額約186億円)には、連邦政府・州政府からの設備補助金45%、1キロ ワットあたりの買い取り価格は初年度32円、6年目以降16円、これに4円の『再生可能エネルギー証書』が付加されるという優遇ぶり。これは決して政府が 損失を補填するというわけではなく、事業期間20年の高収益事業として計画されているのだ。また、スコットランドでは合計120万キロワットの波力・潮力 発電所の建設計画があり、投資総額は7000億~1兆円と言われているという。

 波のエネルギー密度は太陽のおよそ20倍、風のおよそ4倍。そのため、波力発電施設は設置面積が少なくて済む。

 「洋上風力発電の隙間を埋めるように発電設備を設置するなど、ほかの海洋エネルギーと組み合わせられるという経済的利点もあります。同一海域で一帯事業として実施し、海底ケーブルなどのインフラをシェアすれば、よりコストが下げられるでしょう」

 そのほか、浮き漁礁や養殖場として、漁業との共存も模索されている。

 日本ではまだ実用化されていないが、世界では再生可能エネルギーとして注目され、100を超えるプロジェクトが進行中だという。

  「欧州再生エネルギー評議会は、波力発電導入量を’20年には5テラワット(50億キロワット)と試算しています。日本も乗り遅れてはなりません。今後の 目標は、’20年までに300メガワット(30万キロワット)以上、’30年までに20~30ギガワット(2000万~3000万キロワット)の導入で す」